会長挨拶
第15回日本婦人科がん会議当番世話人
久留米大学医学部 産科婦人科学教室 主任教授
牛嶋 公生

臨床試験でケータイを学ぶ

この度、第15回日本婦人科がん会議を2018年6月29日(金)、30日(土)の両日、久留米市で開催させていただくことになりました。この機会を与えて戴きましたことに感謝申し上げるとともに大変光栄に存じます。

本会議は、代表世話人の 杉山 徹 岩手医科大学名誉教授が2005年に卵巣がん会議として盛岡の地で始められ、成熟してまいりました。婦人科がん治療における臨床試験の成果を地域から発信し、実地臨床の中からもエビデンスの構築を行っていく事の重要性が広く浸透してきたかと思います。婦人科領域のがん治療においては従来の細胞障害性薬剤の他に2013年に婦人科領域としては初めての分子標的薬ベバシズマブが卵巣がんに承認され、2016年には進行再発子宮頸がんにも認可されました。本年4月にはPARP阻害剤オラパリブが承認されています。また複数の免疫チェックポイント阻害剤が国際共同試験として開発治験が進行しており、従来の画一的な方法から治療の選択肢が大きく変わりつつあります。

このような現状を踏まえて今回のテーマを決めさせていただきました。標題のケータイとは “cellular phone” でなく “morphology” 「形態学」のことであります。組織分類の多様な卵巣がんにおいては臨床試験の適格基準の中に組織型が組み込まれます。最近の試験では化学療法後に組織採取が行われ、病理学的効果判定も要求される場合があります。画像診断でも適格基準の判断、評価病変もしくは測定可能病変の選択、直接効果判定なども中央判定で行われることが多くなっています。自らが計画して行う臨床試験のみならず、実地臨床においてもこれらの分野についての知識も必要と思われます。婦人科腫瘍を志す若い医師が病理標本や画像を直接目にすることなく、それぞれの専門家とディスカッションすることもなく、レポートの写しを鵜呑みにする傾向に若干の危惧を抱いています。本会議では古くて新しい形態学の基本と臨床試験における最近の動向を中心にプログラムを計画しています。

久留米は九州新幹線により博多からも15分、福岡空港からも40分と随分便利になりました。また、ご存知豚骨ラーメン発祥の地でありますし、焼き鳥やうどんなどB級グルメの聖地ともいわれます。また、筑後地方は筑後川の豊かな水と筑後平野の美味しい米から作られるたくさんの銘酒があります。市内や近郊にも数々の観光名所がございます。美味しい料理とお酒も堪能していただくとともに先生方の知識の習得と整理のお役に立てる会になれば幸いです。数多くの先生のご参加を心よりお待ち申し上げております。